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不穏なタイ「プミポン後」

経済への影響も深刻

2011年3月号

 一九四六年以来六十五年間、国家元首としてタイに君臨してきたプミポン国王。国民の敬愛を集めた国王は八十三歳と高齢で一昨年九月から入院生活を送り、遠くない将来の「王位継承」は避けられない情勢だ。だが後継者のワチラロンコン皇太子(五十八歳)は、その行いの悪さから極端に国民に不人気だ。
 二〇〇六年にはネパールで強権政治の国王が国民の怒りを買いあっけなく王制が崩壊した。いま中東では、各国で王室や長期独裁政権への民衆の怒りが渦巻いている。同様の不安はタイにも存在する。

不人気すぎる皇太子


 それが表れているのが、タクシン派と反タクシン派の対立やカンボジアとの衝突など、一連のタイの混乱だ。実はこれらの根源には、王室から枢密院、軍へと連なるタイの伝統的支配勢力の、「プミポン後」への不安と焦りがある。
 今年一月、反タクシンの黄色シャツグループ「民主市民連合(PAD)」が、バンコクに戻ってきた。今回の標的は、〇八年の空港占拠で自身が発足のきっかけを作った同じ反タクシンのアピシット政権だ。彼・・・