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経済

「視界不良」の全日空格安航空会社

日航も危ぶむ「継ぎ接ぎ」ビジネスモデル

2011年3月号

 二月十日、全日本空輸の格安航空会社(LCC)「A&F・Aviation(エーアンドエフ・アビエーション)」の設立会見。A&Fの井上慎一社長はその席上、「既存大手から顧客を奪うのではなく、格安料金の提供によってこれまで飛行機に乗らなかった層を開拓する」と意気込みを語った。
 しかし、全日空がLCCに寄せた当初の思惑は、新規の顧客獲得ではなく、捨て身の安値攻勢を仕掛けてくる日本航空の駆逐にあったはずだ。「完全に思惑が外れた。業績不振や運航トラブルなどで全日空本体に害が及ばないことを祈るばかり」――。LCCに長く関わった全日空の幹部は、本来なら晴れの舞台の記者会見を、内心忸怩たる思いで見守っていた。全日空の新会社は、身内からも祝福されない事態が象徴するように、離陸前から前途多難だ。

「二転三転」した設立動機

 
 全日空がLCC設立の検討を始めたのは山元峯生前社長(故人)時代の二〇〇六年に遡る。当時の世界の航空各社の経営環境は燃料価格の高騰などで極めて厳しかった。全日空も例外ではなく、唯一の・・・