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《世界のキーパーソン》ウンベルト・ボッシ(イタリア北部同盟党首)

「ベルルスコーニ後」のキングメーカー

2011年3月号

 この人の発言録は、変人揃いの欧州右翼政治家の中でも、一頭地を抜く。
 彼によれば、北部のイタリア人は、働き者のケルト人の末裔で、南部のイタリア人は、怠け者のローマ人の末裔だから、そもそも人種が違う。したがって、イタリアは人工的な国であり、国歌も国旗も尊敬に値しない。「三色旗をトイレで尻拭きにしろ」「三色旗のトイレットペーパーが欲しい」との発言は、刑事訴追され、懲役十六カ月(執行猶予付き)の有罪判決を受けた。選挙の勝利を「勃起」と表現する。
 移民は、彼にかかれば「ビンゴボンゴ」だ。八〇年代のイタリア版ターザン映画の主人公で、転じて、未開の人、サルといった含意がある。政界の重鎮が、こんな侮蔑的言葉を使うのは、明らかな人種差別だが、何せ首相が「未成年買春」の罪で起訴される国なので、この程度はまかり通ってしまう。
 一九九一年に北部同盟が創設された時、イタリアの知識層や有力メディアは、「北部の分離独立」という主張も、問題発言を連発する党首も、全く相手にしなかった。同時期に台頭した現首相とあわせ、ある左派系の政治評論家は、「ボッシとか、ベルルスコーニとか、何でこ・・・