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連載

日本の科学アラカルト8

日本の「原子力村」では異端 加速器駆動未臨界炉

2011年4月号

「異端」―。
 辞書で引くと「正統からはずれていること」「少数に信じられていること」などと出る。
 科学の分野において、かつては異端とされたことがのちに「正統」とされることがままあることは、具体例を挙げるまでもなく、周知の事実だ。むしろ異端の存在こそが、科学と技術の進歩を担ってきたのだとさえいえる。
 現在、「渦中」にある日本の原子力研究においても、異端が存在する。しかしそれは、科学的論証により異端とされたのではない。歴史的、政治的経緯を背景として、日本の「原子力業界」において隅に追いやられたのだ。
 日本国内のみならず、世界中が経緯を見守る、福島第一原子力発電所における事故。ここで使われているのは、「沸騰水型軽水炉(BWR)」だ。東京電力や東北電力ではこの形式の炉が採用されており、関西電力などは「加圧水型軽水炉(PWR)」を使用している。これは、炉心周囲の軽水(すなわち水)を沸騰させて使用するか、それに圧力を加えて沸騰させずに炉心から熱を運ぶ媒体として使用するかという違いがあるだけで、固体燃料を使用した炉心を臨界状態にして、核分裂エネルギーを取・・・