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独裁アサドを「擁護」する米国

「対イラン」の思惑でイスラエルも同調

2011年5月号

 中東・北アフリカで過熱する民主化要求を巡り、親米エジプトのムバラク前大統領を見限った米国が、反米シリアのアサド大統領には退陣を突きつけず、消極姿勢が際立っている。長くシリアと対峙するイスラエルでさえ、その内実はアサド政権の存続を「黙認」しているようだ。中東の最強権国家で、イランや北朝鮮と軍事的につながるシリアになぜ、それほど「及び腰」なのか。背景には、この地域で影響力を拡大させるイスラム教シーア派の大国イランの影が浮かび上がってくる。

中東の火種の「安全弁」


「平和的なデモへの忌まわしい暴力を強く非難する」
 オバマ米大統領は四月八日、シリア情勢に関する声明を発表し、治安当局と反政府デモ隊の衝突で多数の死者が出ている状況について、シリア政府の強権的な対応を指弾するとともに、民主化の実現を要求した。一見、厳しい姿勢を示したかにみえるが、声明はデモ隊側の暴力もいさめた一方で、父子二代にわたり四十年以上の独裁体制を敷くアサド大統領の退路には一切触れなかった。
 親米アラブのキーパ・・・