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北カフカスは独裁者の「無法地帯」

ロシアの「双頭」にも制御不能

2011年5月号

 二〇一二年のロシア大統領選を前に、メドベージェフ大統領とプーチン首相の鞘当てが目を引く中で、北カフカス地方の政情悪化が進んでいる。チェチェン共和国を筆頭に、地元独裁者が中世の封建領主さながらの専制体制を築く。メドベージェフ大統領は「近代化」を看板に再選への道を探るが、ロシアの地方権力は全く逆方向に動いているのが実態だ。
 三月に開幕した、ロシアのプロ・サッカー・リーグ。チェチェンの首都、グローズヌイの競技場で、この場に似つかわしくない人物がピッチに立っていた。オランダの英雄で、現役時代に数々の栄光をほしいままにした、ルート・フリットだ。チェルシーなど名門を率いてきた四十八歳は、今年から「テレク・グローズヌイ」の指揮をとる。地元マスコミには、「やりがいがある」としながら、「もちろん、随分カネももらっている」ことを認めた。
 海外で無名の「テレク」が、欧州の至宝を獲得できたのは、会長にラムザン・カディロフ・チェチェン共和国大統領を頂くからだ。大統領は、三十四歳の若さで、すでに四年もこの地の最高権力者として君臨し、中央政府の復興資金や共和国内の石油資源の富を意のま・・・