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経済

《企業研究》続 東京電力

「国民負担」でまんまと生き残る

2011年5月号

 福島第一原子力発電所事故は収束の見通しがないまま、放射性物質が大気、土壌、海水に放出され続け、周辺住民の避難は長期化の様相を深めている。その最中、当事者の東京電力を存続させるための賠償の枠組みづくりは急ピッチで進みつつある。放射線のリスクにさらされる国民よりも、東電を筆頭とする電力十社体制と民主党政権を守ろうとする「政財官」の思惑が、事態を矮小化する解決に向かわせている。無限責任を負うべき東電は公的資金で生き延び、ツケはすべて国民に回されるシナリオだ。民間と国策という双面を使い分けるヤヌス企業、東電の真の顔が表れ始めた。

経営破綻すれば金融混乱は確実


 四月十七日に東電は「原発事故の収束に向けた道筋」なるものを公表した。いわゆる「工程表」である。「放射線量が着実に減少傾向」を第一ステップ、「放射線量が大幅に抑えられている」を第二ステップとし、ふたつのステップを合わせ最短六カ月、最長九カ月での収束を目指す。だが、素人目にも、工程表が希望的観測に基づいた、世間を安心させるための机上の作文であること・・・