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都知事選直前に謎を呼んだ 金町浄水場の「怪」

2011年5月号公開

 


 三月二十三日に東京都の金町浄水場(葛飾区)から二百十ベクレルの放射性ヨウ素が検出された際、東京都は迅速機敏な対応を見せた。都内二十三区の乳幼児に水道水を与えるのを控えるよう呼び掛け、〇歳児用に飲料水のペットボトル二十四万本を配布した。東京都知事選の告示を翌二十四日に控えていた石原慎太郎知事は大いに信頼感を高めた。しかし、一連の動きには幾つもの「謎」が浮かぶ。

 第一に、水道水の検査対象は「文部科学省が水道蛇口から採取した上水」(蛇口水)が基準なのに、都はなぜか浄水場の測定値を公表した。食品安全委員会元委員は「浄水場は水を飲める状態にする装置だから、放射性物質に限らず、様々なノイズが出るのは当たり前。都の公表は明らかに過剰反応」と批判する。制限解除の方法も謎だ。浄水場で基準値を下回った二十五日、水道局は「水道管に二日間くらい残る可能性があり、引き続き摂取を控えてほしい」と説明。一方で福祉保健局は「健康上問題はない」と見解が分かれた。科学的には明らかに水道局に説得力があるが、結果は「即時解除」。

 そもそも汚染が長期化した場合にペットボトルの配布は長続きしない。都が最初から「短期解除」を見越していたならば見事な対応だ。ただし、「食の安全行政」ではなく、「都知事選対策」としてだ。


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