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ロシア軍が深刻な「兵員不足」

広大な「国土防衛」が手薄に

2011年6月号

 二〇一二年のロシア大統領選挙を前に、ロシア軍の危機が深刻化している。ロシア軍は、プーチン大統領時代から、「志願兵中心の精鋭部隊」への脱皮を図ってきたが、軍改革が暗礁に乗り上げた上、人口減と徴兵忌避で大幅な兵員不足に陥っている。ロシア政府は徴兵強化で兵員をかき集める意向だが、「軍国主義化」への反発は強まるばかりだ。
 今年四月一日に始まった「春の徴兵キャンペーン」は、例年以上に騒々しい。「定数割れ」を恐れる軍当局は、目標を前年より七万人も減らした上で、「二十万人徴兵」を断固死守する構えだが、徴兵反対グループは街頭デモに加えて、ソーシャル・ネットワークに、「軍内イジメ告発」サイトを立ち上げ、反対運動を強めている。
 徴兵の手段は荒っぽくなるばかりだ。昨年十二月には、武装警察官部隊が、チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院の学生寮を急襲し、徴兵年齢(十八歳から二十七歳)の男性約五十人を徴兵事務所に拉致する事件が起きた。「徴兵逃れは許さない」という軍当局の決意を反映したものだったが、徴兵嫌いの一般国民は大きなショックを受けた。音楽院の学生は「大事な指を負傷したら、ロ・・・