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社会・文化

新「政商」孫正義の野望

狙いは電力事業への参入

2011年6月号

 憂国? 義憤? だまされてはいけない。ソフトバンクの孫正義社長が訴える「反原発」は、福島第一原子力発電所事故の被災民のためでも、環境負荷軽減のためでもない。孫社長にとって反原発は電力事業参入への切符。コンピューターソフトの卸販売に始まって銀行、通信と続いてきた壮大な「食い散らかし」の帰結点にすぎない。反原発で意気投合する民主党政権への接近ぶりにはもうひとつの野望が露骨に見えている。
 政権与党と経済界との関係が希薄とみるや、自らの社長室を実働部隊としてあからさまなロビー活動を展開。天下国家の大計を謳いながら、脇の甘い若手民主党議員を巧みに取り込み、自らへの利益誘導を図るあざとい「活躍」ぶりは、まさに遅れてきた「政商」と呼ぶにふさわしい。

自説を熱弁し首相を籠絡


 本誌が前号で予想したとおり、はやくも孫社長は動いた。共同通信は五月二十一日、「ソフトバンクが大規模な太陽光発電所の建設を検討している」と報じたのだ。その後の報道によると、ソフトバンクは大阪、三重、鳥取など二十六道府県の自治体・・・