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経済

このままでは日本から企業が逃げ出す

島田晴雄(千葉商科大学学長)

2011年7月号

 ―大震災を機に企業の海外流出に拍車がかかっています。

 島田 破壊されたインフラやサプライチェーンの問題はもとより、電力供給力不足と停電の不確実性の影響は甚大だ。特に、短期的には火力発電への依存や電力需要の抑制策として価格メカニズムの導入も考えられることから、今後の電力料金の値上げは避けられまい。電力供給回復の道筋も不透明で長期計画も立てられない。そうした状況では企業が海外へ逃げ出すのも当然だ。今の国際経済は個々の技術や製品の競争ではなく、すでにシステム間競争の時代に入っている。国家の社会経済システムが投資に適合的か否かという観点が重要であり、電気料金などのインフラ費用は税制とともに国家経済システムの重要な一部を成している。ただ、確かに大震災で企業の海外流出に拍車はかかっているが、これは根の深い構造的問題だ。

 ―構造的問題を生み出している要因をどうみていますか。

 島田 企業のパラダイムも政治や行政もあらゆるシステムが、高度成長期で発展が止まっている。四十年遅れ・・・