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経済

《クローズ・アップ》清野 智(東日本旅客鉄道社長)

震災で露呈した「乗客軽視」の社風

2011年7月号

「地下鉄や私鉄が一生懸命頑張っているのに、JR東日本がこの体たらくだ」。石原慎太郎都知事がJR東日本を痛烈に批判した。三月十一日の東日本大震災当日、JR東日本が列車の運行を全面休止し、首都圏の交通を大混乱させたうえ、駅を早々と閉鎖し、帰宅できないまま構内にいた乗客を閉め出したからだ。都庁や区役所、大学、公会堂などの公的施設はもちろん、私鉄や地下鉄の駅、民間企業や個人商店までもが夜通し歩いて自宅に向かう多くの市民を受け入れ、水や食料まで提供した。
「駅ナカ」ビジネスには人一倍熱心で、駅構内にできるだけ店舗を入れ、家賃収入を稼ぐことに血道を上げる一方で、最も大切にすべき乗客には避難場所も休憩場所も与えなかったJR東日本の対応は旅客運送業、サービス業の根幹にもかかわる“重罪”だろう。単に構内から閉め出したという簡単な話ではない。旅客を守る義務の放棄だからだ。大震災から三カ月以上たった六月二十日になって、ようやく清野智社長が都庁を訪れ、都知事に頭を垂れたが、首都圏住民のJR東日本に対する信頼感は大きく損なわれた。
 大震災でJR東日本は甚大な被害を受・・・