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政治

《罪深きはこの官僚》松永和夫(経済産業省事務次官)

電力利権擁護に奔走する守旧派の親玉

2011年7月号

 五十年間で六十八人のOBが天下るなど電力会社と根深い癒着関係を続けてきた経済産業省―。そのトップの松永和夫事務次官は三月下旬、全国銀行協会会長の三井住友銀行の奥正之頭取(当時)と密談し、東京電力への二兆円の緊急融資を引き出すことに成功。一方、子飼いの北川慎介総括審議官らを使って、金融機関や株主の責任を問わずに国民に負担をツケ回し、東電の地域独占体制も温存する損害賠償スキーム作りの陣頭指揮も執った。天下り先の電力業界を死守する守旧派の“親玉”として松永は奮闘したのだ。
 松永は事態を先読みして省益擁護に走る能力も抜群だ。原発事故でエネルギー政策の見直しは必至とみた松永は、官僚主導で今後のエネルギー政策の方向性を決めるべく、四月二十八日に海江田万里経産大臣が発表した「今後のエネルギー政策に関する有識者会議」(通称エネルギー政策賢人会議)を設置。著名なジャーナリストや財界人など多忙な人物ばかりをメンバーに選び、実質的な議事進行を事務局の経産官僚で仕切ろうと画策したのだ。しかし松永が「エネルギー賢人会議を議論の場にしましょう」と何度進言しても、菅直人首相は首・・・