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社会・文化

「原発三十キロ圏」の医療が崩壊

国と県による「棄民政策」が原因

2011年7月号

 福島県相双地区(浜通り)の医療が、今、崩壊の危機に瀕している。救急患者のたらい回しは日常茶飯事で、地元で治療が受けられるのは半分程度。さらに、重症患者を治療する三次救急医療機関がない。この地域で大きな交通事故を起こすと助かる可能性は低い。

入院診療再開の訴えを拒否


 特に悲惨なのは南相馬市だ。福島第一原発の事故を受けて、政府は二十キロ圏内に避難、二十~三十キロ圏内に屋内退避を指示した。結果、南相馬市は三分割された。
 パニックに陥った南相馬市民は一斉に避難し、七万人だった人口は一万人まで減少した。残されたのは、寝たきりの老人などの社会的弱者だ。逃げ出したのは市民だけではない。病院関係者も同じだ。南相馬市の中心で、屋内退避を指示された原町区には四つの一般病院と一つの精神科病院が存在した。このうち、南相馬市立総合病院(以後、市立病院)を除く全ての病院が閉鎖した。診療を続けた市立病院でさえも「震災前二百二十七人いたスタッフは八十四人に、医師も十四人から四人に減った」(市立病院関係者)という・・・