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「江沢民死亡説」に揺れる中国

「上海閥」追い落としの動きが再燃

2011年8月号

 七月上旬に流れた江沢民前国家主席の「死亡説」は、中国内外に思いがけない衝撃を走らせた。中国共産党大会まであと一年あまりとなり、党内の権力抗争が激化しているさなかである。江沢民氏という一方の極が消えると、習近平国家副主席への権力継承に少なからぬ影響が出るのは必至だ。
 江沢民氏は、現役引退後も胡錦濤総書記に次いで党内序列第二位に位置する。上海の地方政治家出身の江沢民氏が党のトップに立つ「正統性」を得たのは、かつての実力者である鄧小平氏が天安門事件後、江氏を「革命第三世代の指導グループの核心」とする書簡を残したことによる。鄧氏は、党中央委員会の「秘密決議」で引退後も最高指導者の地位を保持していた。江沢民氏の引退後の地位についてもなんらかの秘密決議があるだろう。これまでも国慶節(建国記念日)など公開の場で胡総書記と並ぶ姿を見せることで権力を誇示してきた。だが、死ねばこの権力は消滅する。死後も遺言が権威を持った鄧小平氏のようなカリスマ性が江沢民氏にはないからだ。
 そのため、保守派、太子党派、上海派、すり寄り派など、中国共産主義青年団(共青団)と次期政権中枢人事を争・・・