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トルコの「イスラム化」は止まらない

「政教分離の守護者」は虫の息

2011年9月号

 トルコのエルドアン政権が強大化している。これまで国の近代化を支えてきた世俗派エリートは「改革」で勢力をそがれ、とりわけ、国是である政教分離の守護者を自任する軍部は・虫の息・だ。国父アタチュルクの血統として過去四度、政権を転覆させた軍部だが、「もはやクーデターはあり得ない」とまでささやかれ始めた。エルドアン政権の野心は国内にとどまらず、旧オスマン帝国支配地域での影響力を再興する「ネオ・オスマン主義」にも意欲を燃やす。米欧は民主国家トルコを中東安定の要と位置づけてきたが、イスラム系のエルドアン政権の強大化は国家の「宗教化」の脅威と表裏でもあり、足場は揺らいでいる。

民主国家建設の時代は終焉した

 我が国は第二段階に入った―。トルコのメディアは「異例」の事態をこう評した。七月二十九日、トルコ軍のコシャネル参謀総長と陸・海・空軍の各総司令部がそろって辞任したのだ。アタチュルク初代大統領が追求した民主国家建設の時代は終焉した、と分析した。  トルコでは従来、軍首脳の一斉辞任など考えられなかった。軍部こそ圧倒的な力を持ち、その意に反した政権側が退陣に追い込まれるの・・・