イスラエルを揺るがす「市民デモ」
国家の危機招く「ユダヤの春」
2011年10月号
中東の軍事大国イスラエルが市民による大規模な抗議デモに揺れている。九月三日には人口約七百五十五万人のこの小国で、空前の約四十五万人が街頭に繰り出し、政権を驚かせた。周辺を敵国に囲まれたイスラエルでは従来、安全保障こそが国民を結束させる唯一無二のテーマだったが、今回は生活費高騰への不満が原動力で、極めて異例だ。近年はテロが激減して経済も好調なだけに、一連のデモを「軍事一辺倒から社会保障などを重視する『普通の国』に変わり始めた証左」と見る向きもあるが、歴史的、社会的に特異なイスラエルにそれは容易でない。「普通」になるということはこの国にとっては「自壊」を意味するからだ。