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連載

続・不養生のすすめ10

「牛乳悪玉説」のカラクリ
柴田 博

2011年10月号

 


 「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる」  

 世に食品をめぐる珍説はあまたあれど、これほどアホらしくも有害な話はそうそうない。新谷弘実氏という医学博士が主張する牛乳否定説は、次のようなものだ。

 「過酸化脂質を多く含む牛乳は、腸内環境を悪化させ悪玉菌を増やし、腸内細菌バランスを崩します。その結果、腸内には活性酸素、硫化水素、アンモニアなどの毒素が発生します」 「牛乳は様々なアレルギーだけではなく、子供が白血病や糖尿病などシリアスな病気を発症する原因となっているという研究論文がいくつも出ています」  

 言うまでもないが、こんなバカげた説が、まともな学術誌で発表されたことはない。科学的実証もなされていないし、エビデンスも存在しない。人間にとって牛乳は必須の食品であり、このことの否定は、そのまま栄養をめぐる人類学の否定につながる。新谷氏の暴論が、まっとうな学会で取りあげられることは皆無だが、にもかかわらず日本では、なぜか彼の著作が売れに売れた。  

 科学的・・・