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東地中海「天然ガス争奪戦」の複雑怪奇

中東と米欧露の「パワーゲーム

2011年11月号

 東地中海で熾烈な資源争奪戦が勃発した。昨年十二月、イスラエル北部の沖合で世界最大級の天然ガス田「リバイアサン」が発見されたのに続き、これに近接するキプロス島の南方でも、リバイアサンに匹敵する埋蔵量がある可能性が浮上したのだ。開発主権を主張する「当事者」の南北キプロスがそれぞれの「保護国」であるギリシャ、トルコを巻き込んで対立を深める中、利権に食い込もうとする米国やロシアが・参戦・。さらに、イスラエルや欧州連合(EU)も情勢監視などの名目で触手を伸ばしてきた。事態は、欧州や中東のエネルギー安全保障をも揺るがすパワーゲームの様相を呈している。

「エネルギーハブ」目指す

「難癖を付ける人々に改めて強調しておくが、我々の(開発の)権利に交渉の余地などない」  九月三十日、キプロス島の南側を占めるキプロス共和国(以下、キプロス)のフリストフィアス大統領は演説で、沖合の天然ガス開発に並々ならぬ意欲を示した。名指しこそしなかったが、「難癖」を付けるのが島の北側を占める北キプロス・トルコ共和国(以下、北キプロス)と、その後ろ盾のトルコを意味しているのは明らかだ。キプロ・・・