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政治

《罪深きはこの官僚》宗像直子(経済産業省通商機構部長)

TPP論議混乱の火付け役

2011年12月号

 


 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加方針を、ハワイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で表明した野田佳彦首相が、冒頭から出端を挫かれた。「日本は全ての物品、サービスを(TPPの)貿易自由化交渉のテーブルに乗せる」という首相発言をめぐり、日米の見解が食い違い、「米国向けと国内向けで発言を変えているのではないか」という“二枚舌疑惑”が広がったのは周知の通りだ。この事態を招く一因を作ったとされるのが、宗像直子・経済産業省通商機構部長(大臣官房グローバル経済室室長)だ。政治状況が読めない鈍感さと危機管理能力の欠如が、時の首相に「二枚舌」「嘘つき」という汚名を着せたばかりか、国の通商政策をも危険に晒している。

 APEC直前、TPP慎重派の強い反対で野田首相は十一月十日の会見予定を一日延期し、さらに表明する内容も「交渉参加」から「交渉参加に向けた(事前)協議に入る」と表現をぼかさざるを得なかった。

 当初の想定とは微妙に状況は変わり、野田首相の発言も慎重さを増・・・