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社会・文化

「築地移転強行」東京都の悪あがき

「液状化」で土壌汚染はいよいよ深刻化

2011年12月号

 東京都が推し進める、築地市場の豊洲移転計画の問題点は繰り返し指摘されている。そして都は、またぞろおかしな論理で豊洲の土壌汚染を軽んじ、計画を推進しようとしている。 「地震が起きて豊洲が液状化したら、誰が責任を取るんですか」  築地市場でマグロ仲卸を営む岩井令子氏はこう心配する。  周知の通り、三月の東日本大震災では、豊洲が液状化し、地中の砂が噴き出る「噴砂」が新市場予定地内の百八カ所で確認された。  都の調査では、豊洲の土壌から環境基準の四万三千倍ものベンゼンや九百三十倍ものシアン化合物が検出されるなど深刻な汚染が判明している。ベンゼンは揮発性の液体で、毒性も発癌性もある。シアン化合物の致死性については説明の必要はないだろう。食品を扱う市場予定地として明らかに不適格だ。  東京都は、震災前に行った調査を元に「汚染除去」を行う工事計画を立てていたが、先の大地震で、液状化が起きた。地中の砂が噴出しているのだから地層が攪乱されていることは容易に想像がつく。以前より、汚染の範囲が広がっている可能性がある。「汚染除去」をするのであれば、まず状況の把握が必要と考えるのが自然・・・