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WORLD

重大局面迎えたインド経済

不況下でも衰えぬインフレ圧力

2011年12月号

「九月にはインフレがピークアウトするだろう」。八月にこう述べたインド準備銀行(RBI・中央銀行)のスバラオ総裁は、さらに十月の金融政策会合の声明で「年度末には卸売物価上昇率は七%以下になる」として「利上げ終了」を示唆した。市場関係者の多くが、この希望的観測を信じて疑わない。だが、現時点でそれを指し示すものは全く見られない。インド中銀は昨年三月以来、実に十三度の利上げを実施、その間の引き上げ幅は三・七五%に達しているが、いまだインフレの勢いは衰えない。ついに不動産市況は崩れ始め、融資は焦げつき、さらには大手企業の破綻懸念が連日トップニュースになる事態となっている。いよいよインド経済の「軟着陸」に黄信号が灯り始めた。

不動産市況崩壊で「恐怖の連鎖」

「下がりそうで下がらないデリーの不動産、三割上昇」「デリーのGDPの四割が不動産」。こんな見出しが最近まで現地紙に躍っていた。  高級ホテルやブランド店、輸入食料品店が軒を連ねるデリー中心部に位置するカーンマーケット。米不動産コンサルタント大手C&Wが「インドで賃料が最も高い」とした場所だ。たしかにインドでは高級・・・