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連載

日本の科学アラカルト16

あらゆる科学分野の未来を照らす「光」 世界一のX線自由電子レーザー

2011年12月号

 



 A°(オングストローム=一千万分の一・)レベルの極微小波長を持つ巨大で特殊なレーザー発振施設と、スーパーコンピューター。一見、無関係なこの二つの施設が日本の科学の幅広い分野で連携して活用されようとしている。

 現在世界一の性能を誇るX線自由電子レーザー(XFEL)発振施設と、スーパーコンピューターの双方を保有するのが、理化学研究所だ。後者は「京」の名とともに、民主党政権下で「仕分け」されそうになったことでよく知られている。前者は今年、最短波長の世界記録を更新し、来春の本格稼働に向け試験運転を続けている施設だ。

 一般に「レーザー光線」と呼ばれるものは、波長と位相の揃った単色光の束だ。指向性が強く干渉性が高い。このような性質を持つ光のことを「コヒーレント光」と呼ぶ。イベント会場などでも見られる通り、可視光線領域でレーザー光線を発生させることは簡単だ。

 しかし、「硬X線」と呼ばれる領域の、波長が極めて短いコヒーレントな光を得ることは技術的に難しい。そしてこ・・・