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中南米を汚染した「桁違い」賄賂企業

各国大物政治家が堕ちた「魔手」

2019年6月号

 今年四月十七日、ペルーの首都リマの高級住宅街ミラフローレス地区に、突如銃声が鳴り響いた。
 二度にわたり計十年間、ペルー大統領を務めたアラン・ガルシアはこの朝、十人からなる汚職捜査員の訪問を受けていた。逮捕が間近に迫ったのを悟り、自宅の銃で自分の頭を撃ったのだ。
 ガルシアは病院に搬送されたが、間もなく死亡した。若い頃は米国のケネディ大統領にも比べられた、ペルー政界の大御所の劇的最期は、国民に衝撃を与えた。同様に驚きだったのが、ガルシアが同じ会社からの収賄で捜査を受ける、四人目の大統領経験者だったことだ。
 現職のマルティン・ビスカラ大統領を除き、二〇〇一年以降に就任した全大統領が、ブラジルの多国籍建設企業「オデブレヒト」社から巨額の賄賂を受け取っていた。昨年十月には、アルベルト・フジモリ元大統領の娘ケイコも同社からの収賄容疑で逮捕された。

「世界史上最悪の汚職企業」

 しかも、ペルーはオデブレヒト社にとって、贈賄で抱き込んだ顧客の一つでしかない。七十カ国以上で操業する同社は現・・・