三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

台湾・香港が示す中国の「近未来」

金融と製造業で「お手本」に学べるか

2013年9月号

 中国の習近平国家主席―李克強首相の指導部は急減速する経済のてこ入れに再び、インフラ建設というカンフル剤を打ち始めた。十月に習―李体制の命運を左右しかねない「三中全会」という共産党の重要会議を控え、多くの中国ウォッチャーが予想した通り、構造改革よりも景気対策優先に政策を切り替えた。  従来の指導部と変わらない朝令暮改の対応であり、中国経済は過度な政府投資依存とシャドーバンキングが象徴する不健全な金融システム、製造業の過剰生産能力、産業高度化の遅れといった問題をますます肥大化させながら走り続けることになった。  中国経済の矛盾が深刻化していく一方で、中国自らが渇望する構造問題からの出口を指し示しているのは、実は香港と台湾である。「一国両制」のもと、中国の特別行政区となった国際金融センター・香港と「ひとつの中国」という仮想現実を拒否しつつ、経済面では不可分な関係に陥っている台湾。だが、両地域は「金融の香港」「製造業の台湾」というグローバルにみてもトップクラスの機能がある。その機能、存在感こそ、実は中国経済に必要なものであり、国家の存立さえ脅かしかねない経済の破綻を回避する道なの・・・