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チベットの「真っ暗」な近未来

亡命社会「分裂」に手ぐすね引く中国

2015年7月号

「高度な自治」か「独立」か―。この古くて新しい問題がいま、亡命チベット人社会を分断している。  チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世が「チベット独立」の要求を捨て、自治の実現を目指す「中道のアプローチ」を公表してから二十七年。自身は政治から身を引き、チベット亡命政府が中国との対話を引き継ぐはずだった。だが、中国は依然として亡命政府を対話の相手として認めていない。事態が進展しないことへの不満は、「独立派」を過激化に追い込む可能性を秘めている。  亡命社会の内部対立が表面化したのは、三月十日のチベット蜂起記念日だった。この日は毎年、亡命政府の拠点があるインド北部ダラムシャーラーでチベット僧や亡命社会の非政府組織(NGO)などがデモを行うのが通例で、これまでは「独立要求」を含む過激なスローガンも一定程度、許容されてきた。  だが、複数の関係者によると、今年は準備段階で意見が割れた。若者を中心に支持を集める「チベット青年会議」が従来通り、独立を求める立場で行進すると主張したのに対し、中道路線を堅持する「チベット女性協会」などの一部の団体が難色を示した。各団体による会合は複・・・