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政治

《罪深きはこの官僚》奥原正明(農林水産省経営局長)

農協改革「骨抜き」にした次官候補

2015年3月号

 安倍晋三首相が「六十年ぶりの大改革」と胸を張る「農協改革」だが、その実態は抜け穴だらけだ。そもそも農協の力の源泉は、一地域一農協の「地域独占」にある。民主党政権下ではこの「テリトリー制」が議論されたが、安倍政権は最初からこれを棚上げにした。

 信用・共済事業の分離につながると期待された「准組合員制度」の見直しは、「五年間の調査期間」で決着。首相の任期を考えると「手を触れない」と確約したも同然だ。全国農業協同組合中央会(JA全中)の監査権は、当初目指した「廃止」から大きく後退、JA全中の監査機能を切り出して公認会計士法に基づく監査法人とし、地域の農協はどの監査法人を使うかを選択できるようになる。しかし、大半の農協は「外出し監査」を選び、骨抜きとなるだろう。

 唯一の成果は、JA全中の一般社団法人化だ。当事者たちは「本当に残念」(元JA全中専務理事の山田俊男参議院議員)と嘆く。「社団法人化か准組合員制度の見直しか」の二択を迫る戦術は、「これは効いた、もの凄くうまいやり方だった」(山田)。ただ、これも農協法改正案付則に「全中が農協の代表・統合調整・・・