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連載

Book Reviewing Globe 332

国がよりよく生き延びるには

2012年1月号

Great Powers and Geopolitical Change Jakub J.Grygiel The Johns Hopkins University Press 2006

 日本の戦後の平和ボケは、日本人特有の島国的な「一国平和主義」の産物ではあるが、実はそれだけではない。

 日本だけでなく世界もまた、冷戦という名の「長い平和」を満喫し、国際政治のイロハをややもすれば忘れがちになった。

 地政学というイロハである。

 米国が冷戦の間に、戦後の平和の土台をつくった。

 米国の圧倒的な海軍力が、世界の航行の自由とそれあってこその自由貿易を可能にした。

 その土台の上に、ケネディ・ラウンドも東京ラウンドもウルグアイ・ラウンドも花咲いたのである。

 冷戦後、国際政治は激変した。中国やインドが台頭してきた。9・11後、それはさらに変質した。米国が二つの致命的な「勝てない戦争」の泥沼にはまった。リーマンショック後、ソブリン危機が「国・・・