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経済

日本が独走「最先端石炭火力発電」

世界を制する数少ない有望技術

2012年1月号

 二〇一一年十二月十六日に野田佳彦首相は、福島第一原子力発電所の「冷温停止状態」を発表し、事故収束を世界にアピールした。この甚大な原発事故を契機に、国内では節電ムードや脱原発機運が盛り上がったが、その一方で世界の電力需要の増加が止まらない。中国の電力需要はこの二十年間で六倍、インドの電力需要は三倍と驚異的な伸びを示している。この急増する電力需要に直面する世界では、石炭火力発電の存在感が近年ますます高まっている。中国の電力の八割、インドの電力の七割は石炭火力が占めるほか、エネルギー大国である米国でも電力の五割は石炭火力である。世界全体でも、電力の四割は石炭火力が占めているのだ。  石炭火力の最大の利点は発電コストの圧倒的な安さにあることはいうまでもない。現状のエネルギー価格体系を見ると、熱源一千キロカロリー当たりの価格では、石炭は原油の五分の一、液化天然ガス(LNG)のほぼ半分に過ぎない。さらに、可採年数が二百年を超える豊富な資源量や地政学リスクのない遍在性なども利点だ。  一方で、石炭は単位熱量当たりの炭酸ガス排出量が他の化石燃料である石油、天然ガスと比較して二倍に近く、燃・・・