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政治

《罪深きはこの官僚》久保成人 (国土交通省鉄道局長)

「整備新幹線」復活に奔走した周旋屋

2012年2月号公開

 


 暮れも押し迫る十二月二十六日、「コンクリートから人へ」を掲げて政権交代を果たした民主党政権の象徴的な政策転換の一つ、「整備新幹線の凍結」が解除され、北陸・九州(長崎ルート)・北海道の三線の新規着工が正式に決まった。未着工区間の事業費は、北海道新幹線の「新函館(仮称)~札幌」が一兆八百億円、北陸新幹線の「金沢~敦賀」が八千五百億円、そして九州新幹線・長崎ルートの「諫早~長崎」が一千百億円で、合計の総事業費は約三兆円にも及ぶ。しかし未着工区間は三線とも「費用対効果が乏しい」とされる路線ばかりだ。財政事情が厳しさを増し、消費増税論議が政局の一大テーマとなる中、この無駄な大型公共事業を復活させるという「暴挙」を推し進めた首謀者が国土交通省の久保成人・鉄道局長である。

 政権与党内で「税金の無駄撲滅」の姿勢が薄れる一方で、動きを活発化させていった族議員と連携し、久保は国会で「(前田武志)国土交通大臣、奥田(建)副大臣をはじめとする副大臣、大臣政務官の下で整備新幹線問題検討会議を設けて、精力的に検討を進めております」(同年十一月四日)と推進姿勢を繰り返し明言してきた。前田大臣は言わずと知れた国交省OB、奥田副大臣(石川一区)は地元建設会社「治山社」出身で、北陸新幹線推進の急先鋒として知られる人物だ。野田佳彦首相の人事が「人からコンクリートへ」という路線変更を意味するものと嗅ぎとった久保は、巻き返しの好機とばかりに一気に新規着工へと突き進んだのである。

 そのための布石を打つことも怠っていない。久保らが尽力して昨年六月に成立させた「改正旧国鉄債務処理法」などは、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の利益剰余金の一部を整備新幹線凍結解除(着工)の財源に振り向けるための布石以外の何物でもない。「財源不足」という、これまでの着工見送りの「障害」を取り除いてみせたのである。

 こうした表立った動きとは別に、水面下でも精力的な動きを見せてきた久保は、昨年十月末にJR北海道の中島尚俊前社長の「お別れ会」に出席した際、その足で北海道庁に密かに立ち寄り、道庁幹部に「地元同意が課題。お願いします」と強く要請をした。これを受け、道庁は翌月から地元同意の取り付けに動き出し、これが北海道新幹線新規着工の直接的な「呼び水」になったといわれている。

 東日本大震災の影響で、三陸鉄道など被災地の鉄道網に大きな被害が出たことから、整備新幹線推進派の中でさえ「凍結解除は厳しくなった」との見方が出ていたほどだ。それでも地元選出の族議員と二人三脚で、三線新規着工にこぎつけた久保の「剛腕」をもって、いわゆる「我田引鉄の復活」と指摘する向きもあるのは当然だろう。

 京都大学法学部を卒業した久保は一九七七年、旧運輸省に入省。大臣官房人事課長や航空局監理部長などを経て、二〇〇七年に鉄道局次長となった。そして〇九年に海上保安庁次長を務めた後、遂に一〇年八月、鉄道局長のポストを射止めた。ここにきて整備新幹線のみならず、八ツ場ダムや外環道、スーパー堤防といった大型公共事業を次々と復活させている国交省。鉄道局長に就いて以降、早速「大仕事」を成し遂げた久保もその一翼を担った形だ。省益拡大に目がくらんだ彼らの前時代的な「暴走」が、危機的な国家財政を破綻の淵へと追い込んでいる。(敬称略)


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