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連載

続・不養生のすすめ 14

幼も老も苦しめる「エイジズム」
柴田 博

2012年2月号

「子供を叱るな来た道、年寄りを嗤うな行く道」。初めてこのアフォリズムに接したとき、その含蓄に深い感銘を受けた覚えがある。しかし次第に、そこに内在している基本的な認識に疑問を抱くようになってきた。すなわち、ここには、成人の実体と価値観が絶対的であり、子供は成人の未熟なもの、年寄り(老人)は成人の成れの果てという強烈なエイジズムの臭いがするのである。

 エイジズムは、レイシズム(人種差別)、セクシズム(性差別)に次ぐ第三の差別としてアメリカの老年学の先覚者ロバート・バトラー博士により、一九八六年に創出された用語である。字句どおりの意味は年齢差別であるが、内容は高齢者差別のことであり、私も日本語の著書では高齢者差別という訳語をあてることも多い。本稿は、高齢者差別に感じられるエイジズムの臭いを成長・発達期にある子供、とくに小児保健の分野で感ずることを述べたいと思う。その前に新しい概念である高齢者差別のことを紹介しておく必要があるだろう。

 高齢者差別の概念は当初は否定的なもののみであったが今日では肯定的なものもふくまれる。いずれにせよ、高齢者への偏見・・・