三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

固まる習近平体制の骨格

知られざる「薄熙来失脚」の真相

2012年4月号

 中国共産党指導部内の権力抗争は、三月の全国人民代表大会(全人代)の壇上で外部にも見える形で演じられた。今年の全人代は来年春で引退する温家宝首相にとって最後の政治活動報告だったが、記者席の関心は渦中の人、薄煕来・重慶市党委員会書記(当時)に集中した。  党政治委員クラスが並ぶひな壇の席で、薄書記はあくびをしたり、会場に向かってVサインをしたり落ちつかない。そのたびにシャッター音が響いた。ひと月前まで保守派長老の薄一波元副首相を父に持つ名門二世、太子党の輝ける星だった。しかし二月、暴力団摘発の先頭に立ってきた腹心の王立軍副市長が米国総領事館に亡命するという異変が起き、輝ける星は堕ちた。

「打黒の英雄」が踏んだ「虎の尾」

 全人代最終日の記者会見で、温家宝首相は「政治改革を進めなければ、再び文革の悲劇が起きかねない」と激しい口調で机を叩いた。記者団は権力闘争がまだ続いていることを察知した。文革とは薄書記の「打黒」批判であることは明白だ。「打黒」は、黒(暴力団)を打ったのではなく、暴力団もどきの違法な拷問によって調書をでっちあげた「黒打」であり、・・・