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社会・文化

首都圏にも迫る「高齢・過疎化」

沈みゆく「埼玉・千葉・茨城」

2012年4月号

「地方だけではない。東京近郊にも高齢者だらけの過疎地が広がっていく」  にわかに信じがたい話が、学者の一部で議論され始めた。俎上にのぼっているのは埼玉、千葉、茨城の三県だ。理由は医療過疎。小児科を筆頭に、医師不足が深刻化して、子育て世代がまともに生活できなくなるという。  すでに事態の悪化は始まっている。昨年末、埼玉県の志木市立市民病院は小児・小児外科入院診療を廃止し、「高齢者向けの訪問看護や在宅診療の充実などに比重を移そうと考えている」と発表。市民から反対の声があがっているが、小児科の常勤医は五十九~六十四歳の三人しかいない。これでは小児医療の維持は無理だ。  志木市は埼玉県南部に位置する東京のベッドタウン。これと近接する東京都練馬区でも同種の問題が発生している。舞台は日本大学医学部付属練馬光が丘病院だ。ことの発端は、病院開設時に日大が練馬区に支払った五十億円の保証金を、練馬区が「一般財源」として使い込んだ揚げ句、返済しない方針を表明したことによる。これをきっかけに両者の関係が悪化した結果、三月末日をもって日大が病院運営を終了することになった。病院運営は自治医科大学・・・