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トヨタで高級車のキャンセル続出 系列店への「極秘」売り込み作戦

経済●情報カプセル

2012年5月号公開

 トヨタ自動車が、欧州債務危機の思わぬ余波を受け、販売系の幹部が頭を抱えているという。究極の国産スポーツカーをテーマに開発した高級ブランド、レクサスのスーパーカー「LFA」の予約キャンセルが続出しているというのだ。

 LFAはボディーに市販車では珍しい炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用。エンジンから内装品に至るまで、すべての箇所に高級部品が使用されている。価格は三千七百五十万円。「部品仕様も価格も常識を超えている」(三河の部品メーカー首脳)というシロモノだ。元町工場(豊田市)では、ひと月に約二十台をつくるのがやっとで、二〇一〇年十二月から一二年十二月までの二年間に五百台の限定生産を決めている。ドイツのサーキットで豊田章男社長が何度も走り込みを行っており、思い入れは強い。

 LFAの相次ぐキャンセルに歯止めをかけようと、トヨタの販売幹部は系列販売店の役員や部品会社の役員、親戚筋など、あらゆる方面に声をかけているという。だが、このキャンセル事情は、社内では極秘扱いに。「豊田社長の顔に泥は塗れない」と、LFAの販売担当者には、悲壮感すら漂っているという。

 だが、売り込みをかけられた下請け部品会社幹部は、「一円でも安くしろ、と値下げ圧力に何とか耐えてきたけど、LFAを買えとは。家が買えるよ」(樹脂部品会社幹部)と冷めきっている。


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