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連載

続・不養生のすすめ17

終末期は余計なことをするな
柴田 博

2012年5月号

人間の終末期や死に関する問題はかなり長い間タブー視されていた。この二十年くらい死の問題は語られるようになってきているが、それは主として、文学、哲学、宗教心理学などのいわゆる人文学の視点からである。医学や医療を提供する立場の人々は、これらの問題に関する発言を極力、控えるか避けるか、してきたといえるであろう。終末期のケアを行う者の本音は、何かトラブルが起こったとき、チラリともらされるくらいのものであった。

 しかし、最近、終末期のケアにたずさわっている医師によって書かれた二冊の著書が大きな関心を集めベストセラーとなっている。一冊は、老人保健施設で働いている医師中村仁一氏の著書『大往生したけりゃ医療とかかわるな「自然死」のすすめ』(幻冬舎)であり、もう一冊は特別養護老人ホームで働いている医師石飛幸三氏の『口から食べられなくなったらどうしますか「平穏死」のすすめ』(講談社)である。

 この二人に共通しているのは、前者は内科、後者は外科の違いはあるが、長い間医療の第一線にたずさわってきて、定年後、終末期のケアの仕事を行っていることである。お二人とも七十・・・