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「テロとの戦い」とは何だったのか

ビンラディン死後一年で疑問続出

2012年6月号

「われわれは十年以上を戦争の暗雲の下で過ごしてきた。だが今ここに、アフガニスタンの夜明け前の暗さの中で、新たな日の光を地平線に見ている」  五月二日、アフガニスタンを電撃訪問したオバマ米大統領は、演説の中に時代の変化を殊更強調する言葉をちりばめた。戦争が平和に転換し、経済の停滞が待ち望んだ成長に変化するのは、自らが率いる民主党政権の政策あればこそであり、新しい時代を率いるにふさわしい大統領こそ、二期目を狙う自分だ、と言いたかったらしい。  演説は、オサマ・ビンラディンを殺害して「正義を実現」した日から一周年という象徴的なタイミングを選んで行われた。しかし、共和党の有力な大統領候補であるロムニー氏も指摘したとおり、タリバンが勢力を強める中で米軍がアフガニスタンから予定通り撤退すれば、この国は対テロ戦争前の混乱に戻ってしまうだろう。  四月にはカブールでタリバンの大規模攻撃があり、被害は大統領府や議会にまで及んだ。首都すらこれほどに危険が迫っている中でオバマ大統領が訪問したといっても、それは首都近郊のバグラム空軍基地。安全の確保された空間でのパフォーマンスに過ぎなかった。・・・