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政治

「真夏の決戦」野田の勝算

「民自連携」は実現するか

2012年6月号

 首相野田佳彦の格闘技好きは筋金入りと言っていい。日中韓三国首脳会合出席のため北京入りした野田は、五月十三日夜、宿舎の長富宮飯店で随員と懇談した。酒も入った席で野田は伝説のプロボクシング世界ヘビー級タイトルマッチ「キンシャサの奇跡」を話題にした。一九七一年三月。ザイール(現コンゴ民主共和国)の首都キンシャサで史上最強のハードパンチャーと言われたチャンピオン、ジョージ・フォアマンと挑戦者カシアス・クレイ(モハメド・アリ)との激闘だ。試合は七ラウンドまでフォアマンのワンサイド。クレイはロープを背に防戦一方のように見えた。しかし、八ラウンドになって“打ち疲れ”で体力を消耗したフォアマンをクレイは見逃さなかった。一発のパンチでフォアマンをマットに沈めたのである。野田はこう付け加えたという。 「もちろん私がクレイです」  野田が頭に描く「フォアマン」は誰か。消費増税法案に強く反対する元代表小沢一郎なのか。野田を差し置いて小沢寄りの言動を繰り返す民主党幹事長輿石東なのか。いずれにせよ野田は六月二十一日の会期末というロープを背に「一発逆転」の決意を示したのである。

「板門店」のような交渉窓口

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