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社会・文化

東京へも「強い台風」は必ず来る

石川裕彦(京都大学防災研究所教授)

2012年7月号

――先日の台風は直撃もせず小型だったが、東京は大混乱しました。
 石川
 一九五八年に神奈川県に上陸して死者・行方不明者一千人以上と、広範囲に及ぶ浸水被害を出した「狩野川台風」から五十年以上が経過する。当時三歳の私は狩野川近くに住んでいたが、ほとんど記憶がない。しかし、台風で肉親を失った方の話をその後何度も耳にした。想像を絶する台風というものから長年遠ざかっているために、経験に乏しく、普通の台風で混乱してしまうのだろう。

 ――なぜ五十年来ていないのですか。
 石川
 それは上陸台風が少ないことによる。日本に上陸する台風は五一年以降の平均で年三個弱。このうち関東地方を通過する台風は年一個以下。何年かに一度発生するような猛烈な台風が首都圏を直撃するケースが稀であることは当然だ。しかし、未経験の間の悪い事例が生じないとはいえない。勢力を保ったまま東京近郊から上陸して、利根川流域に大量の降水をもたらし、東京湾に高潮を発生させる最悪の台風が来ることに備える必要がある。

 ――どんな被害が想定されますか・・・