三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

世界食糧危機の「大嘘」

農産物メジャーと投機筋の「共謀」

2012年7月号

 一九九〇年代前半、米環境活動家のレスター・ブラウン氏が中国の食糧不足の可能性を指摘する『だれが中国を養うのか?』という警鐘的な著作を発表して以来、世界では中国発の世界食糧危機説が一般の人にも定着した。加えて石油、銅などで起きた需給要因による価格上昇によって、穀物は今世紀に入って高騰、乱高下を繰り返しながらも高値水準を維持している。では、本当に食糧危機は起きるのか?  事実は正反対だ。中国はもちろん世界で食糧増産は着実に進み、食糧危機の不安はむしろ遠のいている。にもかかわらず食糧危機をあおる著作、記事が後を絶たない。そこには世界の食糧を種子から農薬、肥料、集荷、貿易まで一貫して握り、巨大な利益を得ている様々な存在がある。

食糧増産は人口の伸びを上回る

 中国の経済分野の行政機関は今、次第に現実化してくる中国経済の失速、ハードランディング・シナリオにおびえているが、唯一顔色のいい部門がある。農業、農村問題に責任を負う中央農村工作領導小組と農業部だ。中国の穀物生産が今年も順調で、冬小麦など春から夏にかけて収穫する「夏糧」は「史上空前の豊作」(中・・・