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経済

欺瞞だらけのJAL「再上場」

現場を犠牲に「初値」吊り上げ

2012年8月号

 奇跡の「V字回復」を果たし再上場を九月に控えた日本航空(JAL、植木義晴社長)の眼前に、早くも暗雲が漂っている。  ここにきて、「(上場前に法人税の返還を要求するなど)鶴には恩返しさせなければ」と叫ぶ自民党航空問題プロジェクトチームがJAL再上場反対を決議し、全日本空輸(ANA)も「競争環境が歪められる」と批判の声をあげている。  だが、そればかりではない。現場や利用者、さらには一般投資家の利益を犠牲にし、一部のステークホルダーを潤すだけの「再上場」が唯一の目的と成り下がっているJALの欺瞞に満ちた経営そのものに批判が集まっているのだ。

破綻しつつある人操り

 JAL再建を主導する企業再生支援機構は、再上場時の初値を目いっぱい引き上げ、高値で売り抜けるために躍起となってきた。その結果、JALの業績は再上場審査に付される直近の確定業績(二〇一一年度)をピークとし、その後は下降の一途を辿る可能性が高く、株価も「支援機構が売り抜けた後、下落する」との見方が有力だ。実際に、JALが公表する中期経営計画(一二年二月発表)の「経営目標」でも、一二年・・・