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連載

続・不養生のすすめ20

長生きするほど「寝たきり」は短い
柴田 博

2012年8月号

 半年前、筆者の連れ合いの母、つまり義母が九十六歳の誕生日の二日前に死亡した。この義母の初老期からの人生は、筆者が手探りに模索してきた老年学研究に対してさまざまな教訓を与えてくれた。

 彼女は、五十歳代の前半に、交通事故で夫を失った。しかし、その後の社会貢献が半端ではなかった。四十年前、亡夫の仕事場であった手袋工場跡を地域の高齢者に開放し、コミュニケーションの場とした。のちに行政が若干の資金補助をするようになったが、さだめし、今のデイサービスセンターの走りというところであろう。その後、数え切れないほどの社会貢献活動を展開し、死亡する一年前まで老人クラブの会長を務めていた。

 彼女は奇しくも筆者が高齢者に勧める食生活の積極的な体現者となった。今から四十年前、筆者は日本で初の全国百寿者の調査の一員に加わった。復帰したばかりの沖縄をふくむ全国百人あまりの百寿者を調査し、百寿者は一般国民より高タンパク食、とりわけ高動物性タンパク食を摂っていることがわかった。

 この研究結果が、一般高齢者の食の指針に昇華するにはしばらく日時を要し・・・