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《世界のキーパーソン》ラクダル・ブラヒミ (国連・アラブ連盟 シリア問題合同特別代表)

「絶望」シリアを託された老外交官

2012年9月号

 死者が二万人に達し、難民も二十万人に膨らんだシリア内戦。前任者のコフィ・アナン前国連事務総長をして「ミッション・インポッシブル」と嘆かせたポストに、七十八歳のアルジェリア人が任命された。二十代でアルジェリア独立戦争に加わって以後、世界中の紛争にかかわってきた、国連の頼みの綱である。

「イラク問題で当時のブッシュ政権とやりあった記憶が鮮明で、中国とロシアは歓迎している。オバマ政権はやりにくいだろうが、自分たちも打つ手がないので、大ベテランに任せるしかなかった」と、国連駐在記者。アサド政権は、反政府側に首都ダマスカスやアレッポにまで浸透され、「揺らいでいる」(米国務省の表現)だけに、紛争終結を模索する国際社会のシンボルとして、出番は増えそうだ。

 アラビア語に加え、英仏語も流暢なことから、独立戦争時代はインドネシアの首都ジャカルタを拠点に、アルジェリア民族解放戦線の代表を務めた。円熟期のスカルノ大統領が、「非同盟諸国会議」運動の指導者の一人として活躍していた時代で、若きブラヒミに終生忘れられない感銘を与えた。

 アルジェリ・・・