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「私物化」されるロシア経済

大統領と政商が国富を「収奪」

2012年9月号

 ロシアのプーチン政権が今年、新たな民営化に着手した。一九九〇年代の旧ソ連国営企業の民営化に次ぐ、「第二波民営化」を標榜しているものの、実態はオリガルヒ(新興政商)や政治家による利権争いになっている。ロシアは八月、世界貿易機関(WTO)加盟を果たしたが、オリガルヒたちによる経済の壟断は続く見通しで、健全な市場経済は遠ざかるばかりだ。

名ばかりの「大規模民営化」

 今夏のモスクワは、日本の猛暑をよそに、八月半ばには早くも朝晩の冷え込みが厳しくなった。折から、在住外国人を一段と寒々とさせるニュースが駆けめぐった。「メドベージェフ首相対セチン前副首相」という、過去数年お馴染みの抗争がまた表面化したのだ。  発端は、ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」が、最新のロシア版『会社四季報』の中で、持ち株会社「ロスネフチガス」の会長が、イーゴリ・セチン・ロスネフチ会長兼社長であると「確認」したことだ。「セチン会長」は、「政令によって決まった」ことも付言されていた。その夜、メドベージェフ首相の報道官、ナタリア・チマコワは「そんなもの見たことがない」と語り、・・・