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経済

激変する石油化学産業地図

米国シェールガス革命の余波

2012年9月号

 米国の天然ガス生産の増加が止まらない。シェールガス革命が世界の注目を集めるようになって二年以上が経過する中、米国内では供給が需要を大幅に上回り、天然ガス価格は二〇一二年四月には百万BTU(ブリティッシュ熱量単位)当たり一・八ドルと今世紀に入って最安値を記録した。石油換算では一バレル十ドルに相当する水準にまで暴落しているのだ。  米国では原則として自由貿易協定締結国以外には天然ガスの輸出を認めていないことから、現在のところ天然ガス価格の暴落は、市場が分断されている欧州、アジア大洋州市場に限定的な影響しか与えていない。事実、アジア大洋州市場のLNG価格は、今も米国の天然ガス価格の六倍以上もする。  だが一方で、暴落した米国の天然ガスを原料とした石油化学産業には、ここにきて深刻な影響が顕在化し始めている。安価なシェールガスを原料とした石油化学プラント建設計画が米国内で相次いで進展している折、世界の石油化学産業の勢力地図が激変しようとしている。日本や中東をはじめとする石油化学業界関係者を驚愕させているのだ。

米国で相次ぐプラント建設計画

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