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経済

《クローズ・アップ》吉川 淳(野村ホールディングスCOO)

野村再生の青写真を描く「軍師」

2012年9月号

 野村ホールディングスが自ら引き起こした不祥事のために支払った代償は余りにも大きかった。渡部賢一グループCEO、柴田拓美グループCOOのほか、数多くの役員陣が退任、もしくは降格となった。相次ぐインサイダー情報漏洩事件の発覚で社会的な信用も大きく毀損した。

 危機的状況にある野村グループを率いていくのが永井浩二グループCEOと吉川淳グループCOOだ。このうち、永井氏はカリスマ的な国内営業マンであり、しかも、渡部・柴田体制下で野村證券社長を務めていただけに、社外の認知度は高い。それに対して、海外畑の吉川氏のCOO就任を巡っては、「いったい、どんな人なのか」と首をひねる向きが少なくなかった。実際、直前までノムラ・ホールディング・アメリカのCEO兼社長のポストにあった。だが、吉川氏を知る金融マンたちからの感想は異なる。たとえば、あるメガバンクの幹部は「ついに登場した」と大きくうなずいている。

 金融・証券業界にあって、吉川氏の名前が一挙に知られるようになったのは二〇〇一年九月十一日の米国同時多発テロの際だ。当時、ノムラ・アメリカのオフィスは、テロの標・・・