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社会・文化

「不老の小説家」ジョン・ル・カレ

八十歳過ぎても活発に創作を続ける

2012年9月号

 昨年末、ジョン・ル・カレの新刊『ミッション・ソング』(光文社)が出版された。  ル・カレはイギリス、ドーセット出身の小説家。ベルン大学とオックスフォード大学で学び、数年間教職についたのち、イギリス外務省に入って、冷戦下の西ドイツの大使館や領事館で働いた。その経験を生かして、二十九歳で処女作を発表。やがてスパイ小説の大家と呼ばれるが、冷戦が終結し、ベルリンの壁が崩壊して二十年以上がたついまも精力的に執筆活動を続け、まさに巨匠の地位を維持している。

重厚で難解だが滋味がある

 その二十作目となる『ミッション・ソング』は、アイルランド人の父とコンゴ人の母から生まれたサルヴォという通訳をめぐる物語だ。アフリカ諸語を完璧に話せるサルヴォは、イギリス政府の依頼によって、コンゴ民主共和国の対立勢力の代表者が集まる会議で通訳を務めることになった。母の祖国の発展に寄与できると意欲をかき立てられたのも束の間、会議中に、コンゴを犠牲にして私的な利益を貪る謎の“シンジケート”の存在が明らかになる。参加者のすべての発言をただひとり理解できたサルヴォは、祖国を救・・・