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経済

《クローズ・アップ》鍋倉眞一(日本郵便社長)

「悪しき社風」を引きずる

2012年10月号

「あなたの人生にもっとお役に立ちたい。」
 九月上旬、こんなコピーの広告が全国紙や地方紙各紙の紙面を大々的に飾った。十月一日から、郵便局会社と郵便事業会社とが統合し、新会社「日本郵便」が発足するのに際し、日本郵政グループが打ったものだ。その日本郵便の初代社長の座に就いたのが鍋倉眞一・前郵便事業会社社長(六十六歳)である。

 鍋倉氏は、一九七〇年に東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。総務審議官などを経て郵政民営化準備室に入り、二〇〇七年の郵政民営化を事務方として支え〇九年からは郵便事業会社社長を務めてきた。こう聞けば華麗な経歴に見えるが、現場の評判は甚だ芳しくない。

「鍋倉社長と言えば、JPエクスプレス(JPEX=ペリカン便とゆうパックを統合するための会社)統合に伴う大混乱の際、社員にその責任をなすりつけた人で、それ以来、社内では総スカン状態です」と話すのは東京支社の中堅社員だ。

 確かに鍋倉氏は、現場が徹夜で混乱回復に汗を流す最中、統合失敗を「一部社員が不慣れで」と言ってのけた。「ろくな研修もせずに何だ」と・・・