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連載

皇室の風53

狭まりゆく皇室の「窓」再々論
岩井克己

2013年1月号

天皇・皇族の誕生日会見の慣例が揺らいでいることについて前回書いた。その後、天皇の誕生日会見は、宮内記者会と宮内庁との綱引きの末に平成二十四年十二月、どうにか実現した。これからも肉声が国民に伝わる場が続いてほしいと願う。

 この際、宮内庁幹部の会見や天皇・皇族の誕生日会見はどのような経緯で現在の姿になったか改めて紹介しておきたい。

 前回、昭和天皇を二十五年間支えた長官宇佐美毅の「菊のカーテンは上げ下げが難しい」との発言を紹介したが、実は宮内庁長官の定例記者会見はずっと完全オフレコという驚くべき状態が続いていた。オンレコに踏み切ったのは、天皇代替わりや皇太子結婚を仕切った長官藤森昭一で、平成五年の「皇后バッシング」がきっかけだった。

 雑誌などの激しい批判にさらされた皇后が誕生日に倒れ一時声を失った。皇后はその朝発表された文書回答で「どのような批判も自らを省みるよすがとして耳を傾けねば」としながらも「事実に反する報道」への戸惑いと関係者による説明を求めた。藤森が長官会見のオンレコ化に踏み切ったのは間もなくだった。
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