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社会・文化

進化続ける「ロマネ・コンティ」

歴史と人の営みが詰まった「神品」

2013年1月号

「最高峰」と呼ばれる存在が、どの世界にもある。スポーツカーならフェラーリ、甘口ワインはシャトー・ディケム、そして、赤ワインならロマネ・コンティ。愛好家なら一度は飲んでみたい究極の銘酒だろう。ワインに馴染みのない人も、名前くらいは知っている。だが、最も多く語られているにもかかわらず、飲んだ人は最も少ない「神品」でもある。  仏ブルゴーニュ地方ヴォーヌ・ロマネ村の約一・八ヘクタールの畑から生まれる。年産約六千本。ピノ・ノワール種から造られる世界で最も高価なワインの一つだ。正規代理店の価格は三十万円台だが、市場にいったん出ると、プレミアムがついて百万円を軽く超す。近年はさらに高騰を続けている。中国人が収集に血道を上げているからだ。富裕な中国人の標的は、シャトー・ラフィット・ロートシルトから、ロマネ・コンティに移った。二〇一二年十月、香港サザビーズが開いたオークションでは、一九九〇年九本セットが百七十万香港ドルで落札された。一本当たり百九十万円の勘定になる。  そこまで大金をはたいて飲むに値するワインなのか?  イエスであり、ノーでもある。答えは飲み手による。

神に祝福された畑を守る義務

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