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政治

《罪深きはこの官僚》 稲田伸夫(法務省刑事局長)

検察改革を骨抜きにする主犯

2013年3月号

 厚生労働省冤罪事件に端を発し、検事総長の辞任まで引き起こして「危機」に瀕したはずの検察改革議論は、刑事検察の守護者である刑事局長・稲田伸夫の画策で、画餅に終わりそうだ。

 一月二十九日に、法務省の法制審議会で開催された「新時代の刑事司法特別部会」は、検察改革の基本となる中間報告(基本構想)をまとめた。しかしその内容を見ると、従来の自白偏重の捜査体制を改めるはずの設立の趣旨から、二歩も三歩も後退している。

 最大の問題点は焦点である取り調べ可視化の部分だ。「一定の例外事由を定めつつ、原則全過程の録音・録画を義務付け」というものと、「録音・録画の対象は取調官の裁量に委ねる」という両論が併記された。この期に及んで検察・警察の裁量に委ねるという暴論が出てくること自体、疑問符がつくが、これらは「法務・検察の意向が強く反映された」(全国紙司法担当記者)ものだ。

 実は、中間報告は一月中旬に示された「部会長試案」が叩き台となっており両者を比べるとその内容は驚くほど似ている。

 特別部会は、二〇一一年六月から、二・・・